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20 May

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27 April

First experience 前編

大したことありませんが、R18です。
苦手な方はご注意ください。
また、18歳未満の方は閲覧をお控えください。





三大欲求は本能である。
食欲・睡眠欲・排泄欲または性欲。
性欲が三大欲求に入りやすいのは、切り離して考えられがちだが、食欲と睡眠欲とは切っても切り離せないからだ。
どちらか、あるいは両方が不足すれば性欲は増すのだ。
それは種を存続させる為の本能であり、飢餓や睡眠不足で生命の危機に陥ったときとにかく子種をと脳が急かすものだ。




小林は、今まで食と睡眠による生命の危機に陥ったことはない。
といっていいのか、無理やり詰め込まれたため、不幸にも食の危機にならなかったのだ。
思い出しても気持ち悪いしもう二度とあれは嫌だというのが本人の弁だが。
そして幸いにも安心して寝られる場所を見つけていた。
ついでに言えば死にたいという欲求が強すぎて、生に連なる性欲はかなり押さえつけられていた。
そもそも二次成長もまだだったので皆無と言ってもよかった。
の、だが。
少年探偵団に入団以降、ただ生きるためだけではなく成長にも必要なまともな栄養をきちんと摂取した結果、小林にも二次成長が訪れた。
成長痛に苦しめられたり、初めての精通に戸惑ったりもした。
けれど、今の小林には疑問を解決する手段がある。
とりあえず分からないことは野呂か井上に聞けばわかると思っている小林は、小林の家ともなっている事務所にいた井上に聞いた。
それがおかしなことではないし、定期的に自分でも出して処理した方が良いとも教わった。
やり方を聞いたが要領を得なかった為、実際にやってみせろと小林に言われた井上は固まって
「詳しくは花崎に聞いてくれ」
と、逃げを打った。
気になることは放置しない小林は、ならばとすぐに花崎に聞きに行った。
登校日だったので学校行ったら、大友と一緒だった。
山根はまだ授業中らしい。
「おー、小林が学校に来るなんて珍しいな? なんかあった?」
机に腰掛けたまま手を振る花崎。
その横でドライバーを動かしていた大友も小林に視線を向ける。
「道具に問題でもあったー?」
小林が通信ではなくわざわざ訪ねてくる理由は少ないので大友が訊ねれば、首を横に振った。
「あいつに聞いてもわかんなかったから、花崎に聞きにきた」
「井上に聞いてもわかんないのに俺に聞くの?」
まさかの言葉に花崎が首を傾げる。
知識分野において、小林の認識では野呂と井上の下に花崎がいると思っていたからだ。
正直、花崎本人もそう思っている。
「そうしろって言われた」
「井上が花崎に教われって言ったの?」
大友も珍しいと思い問えば、小林は頷いてみせる。
「何々? 俺じゃないと分からなそーなの?」
自分でなければ分からない、と言われて嬉しいのだろう。
花崎は弾むような声で尋ねながら机から飛び降りると、小林の前に立つ。
「オナニー? ってどうやればいいんだ?」
しかし、続いた言葉を聞いた途端真っ赤になって、井上と同じように固まった。
井上以上かも知れない。
「おい?」
「大友に聞いて!」
どうしたのかと小林が声をかけると、弾かれた様にそう言い残して花崎は走って逃げた。
それを見て大友が机にうつ伏せて肩を大きく震わせた。
花崎は逃げてしまったが、大友に聞けと言われたので小林はその場に残って大友が聞ける状態になるのを待つ。
少しして笑いが収まった大友が顔を上げた。
涙すら浮かべていた。
「ああ見えて、花崎はお坊ちゃん育ちで下ネタには弱いからねー」
バカ笑いはできても、下品な内容には免疫が無いと言う。
しかも通信で学んでいるので同学年に友達らしい友達もおらず、猥談をする機会もなかった為、尚更だ。
「ついでにお子様だから恥ずかしがっちゃうんだよねー。思春期だねー」
「お前も同じ年なんじゃないのか?」
確かそう聞いていたはずだと、小林は首を傾げる。
「こういうのは年齢だけの問題じゃないんだよ。あいつみたいにお育ちがいいわけでもないしねー」
正直、俺らの年では花崎みたいな反応の方が珍しいんだよと言いながら、大友は引き出しの奥の方から1冊の雑誌を取り出した。
「ということで、こーれ。山根がいつ見つけてくれるかと仕込んでおいたんだけどー、なかなか見つけてくれないし、あげるよ。」
「なんだこれ?」
「えっちなお姉さんの写真がい~っぱい載ってる素敵なご本」
ウィンク付きで差し出されて、ふーん、と言いながら小林は素直に受け取る。
「で、これをどうしろって言うんだ?」
ぺらぺらと頁を繰っていくが、訳が分からず首を傾げる。
「あー…やっぱり花崎とか山根とは違うねー」
無表情で無反応。
大友はがっかりしたように肩を落とす。
「まあ、これを見てムラムラーって来たら、自分のそれを手で扱く。触ってればどうすればいいかは自分の感覚でわかるだろうから、そこは心配いらないよー。多分ねー」
扱く動きを手で表現しながら言う大友に、しかし小林は首を傾げる。
「ムラムラ?」
「なんかこう、ムズムズする衝動が沸き起こったりしない?」
言われて最後まで確認してみるが、全くそんな感じにはならない。
「しない」
「あらー…好みじゃないのかねー? それとも初めてだから写真じゃダメなのかな? 映像見てみるー?」
「それで分かるなら見る」
「素直だねー。電子媒体の画像と動画は携帯に送ってあげるからおうちで一人の時に確認してね」
「分かった」
「あとこれもあげよう」
「なんだこれ?」
渡された瓶には少しとろみのついた液体が入っている。
「犯人の足元に投げつけて滑って転ばせる為のモンなんだけど、体に問題ないもん使ってるから、滑りが悪い時とかに使うといいよ」
「すべり?」
「あんま乾いてて滑りが無いと痛かったりするから」
「なら貰う」
痛いのが好きな性癖は持ち合わせていなかったので、こちらも素直に受け取ることにした。
用件が済み、花崎が逃げてしまった今、他に大友に用があるわけでもない小林はそのまま事務所へ戻った。
井上に仕事を聞いたが特に入っていなかったので、分からないことをそのまま放置することを好まない小林は早速大友の送ってよこした動画を確認することにする。
それから数時間に渡って資料として提供された映像と本をとりあえず全部確認した。
けれどやはりよくわからなかった。
「ムラムラって何だよ……」
訳が分からない疑問を増やされた結果となって、小林は舌打ちした。






観覧車のゴンドラで寝なくて済むようになった小林は事務所に自室を与えられている。
その自室のソファで目を覚ました。
本来小林が寝る筈のベッドは花崎が占領している。
昨晩は遅くまで任務があった。
事務所に戻った時は花崎も小林も疲れて切っており、けれど井上に報告書の作成をしろと言われ、威圧から逃れるように小林の部屋に飛び込んで二人で何とか報告書の作成を終えた。
途端、花崎は限界とばかりに座っていた小林のベッドに倒れこんだ。
それは僕のベッドだと文句を言う暇もなく寝息を立て始めた花崎に、下手に手を出せば大怪我をさせてしまう所為で無理やり退かす術を持たない小林は諦めてソファで寝たのだ。
先に寝落ちたくせに、花崎はまだ眠っている。
何処でも寝られると自称する花崎は、小林のベッドを占領している現在も違和感などないのであろう。
大変気持ち良さそうだ。
あまりにも気持ち良さそうだから、起きるまで放置することにした。

窓を開け、空気を入れ替える。
よく言えば開放感溢れるゴンドラで暮らしていた小林は、取り戻した幼い頃の記憶も手伝い、部屋に籠もった空気はあまり好きではなかった。
それでも部屋で寝られるようになったのだから、進歩であろうとは思う。
風を取り入れて、一つ深く呼吸をする。
それだけで少しスッキリした気分になる。
ふと視線を室内に戻せば、昨晩書き上げた報告書が机の上にあった。
書き上げたものの、提出はしていなかったことに気づく。
小林がまだ電子媒体に慣れないのでアナログ書類だが、それは顔を合わせずに提出することもできない。
井上にお小言を言われるなと、面倒くさくなった小林はベッドを占領した対価に花崎に提出させようと決めた。
それにしても今日は随分静かだと思う。
いや、部屋はいつも通りだ。
小林は一人部屋なのだから、賑やかな方がおかしい。
では何故静かだと感じてしまうのか。
理由はすぐに分かった。
普段は存在そのものが賑やかと言っても過言ではない男が、静かに眠りを貪っているからだ。
花崎がいるのに静かだから違和感を覚えたのだ。
深く眠る花崎の姿を見ることは少ない。
普段忙しなく動き回り、夜は自宅に帰るため、そもそも寝る姿を見ること自体少ないのだ。
せいぜい声を掛ければ起きる転寝を事務所でしている程度だ。
それすらも、小林が姿を見せれば遊び相手が見つかったとばかりにすぐ飛び起きる。
そう思えば、実は今貴重なものを見ているのかもしれないと小林は気付いた。
ならばじっくり見てやろうと近づく。
ベッドの横に腰を落とし、手と顎をベッドに乗せて花崎と同じ高さに顔を置く。
少しの風にさらさらと揺れる髪は、柔らかで艶もある。
当人が気遣っているとは思えないので、恐らく花崎の家で使われている洗髪料か何かの影響だろう。
花崎の髪に触れられないので、何と無しに小林は自分の髪に触れる。
こちらは靄の影響で無駄な刺激に晒されることがない上、入浴と同時に洗髪という作業を知ったので清潔に保たれたそれは、柔らかく質はいい。
しかし櫛を入れたりはしないし、切る時も掴んで鋏かナイフで切るだけなので不揃いのそれは、乱雑に絡んで、あまり触り心地がいいとはいえない。
花崎の頭を触って得られるであろう感触とは違うのは明確で、すぐに手を離して観察を継続する。
髪と同じ色の睫毛の下にある、夏の突き抜けた青空のような鬱陶しいほど煩いくて眩しい、そのくせじっくり見ると深くて優しい、小林の好きな色は今は見えない。
だから静かなんだなと思いながら視線をずらしていく。
顔色はきちんと食べて運動しているからか、適度に日焼けしており健康的だ。
日焼けも火傷の一種の為、靄に包まれた小林は日焼けすることもなく下手をすれば病的に青白い。
井上に、
「色の白いは七難隠すといわれているのだから、悪いことではないだろう」
といわれたが、それは小林に七つも問題があると言いたいのかと思ったし、何より、野菜炒めを食べながら身長の伸びた小林に花崎が言い放った
「小林ってもやしに似てるな」
が、屈辱的で忘れられない。
当人は白くてシャキっとしていて張りがあると良い意味で言ったらしい。
確かに勝田が作った野菜炒めのそれは、なかなかに歯応えの良いものであった。
だが、小林はひょろりとしたもやしを見てそうは受け取れなかった。
嫌なことを思い出し、軽く舌打ちする。
そんな事を言った唇も健康的な体に似つかわしく、張りがあり血色もよい。
ぽんぽんと言葉が出てくる賑やかなそれ。
時折、無理やりにでも閉じさせたいと思うくらい煩いが、楽しそうに出される声は嫌いではない。
今はその声も聞こえず、静かに閉じられている。
この状態で無理に開かせたらどうなるのか、少し気になった。
出来ないことを残念に思う。
探偵団として活動していて、存外便利に使えるそれに頼ることも増えていたし、成層圏プレーンから放り出されたときには花崎を救うに至った靄を、今の小林はそれほど忌避してはいない。
けれど、やはり誰にも触れないのは惜しい。
特に目の前の花崎に触れられないのは、時々苦しさすら感じさせる。
小林も、花崎を特別に思っていることは認識していた。
生きたいという欲求を起こさせた相手。
しかも母の抱擁以来、初めて体温を感じられた相手。
成層圏から落とされ冷たい風に煽られ、しかも出血により体温の低下していた小林に触れた手は、同じく冷えていながらも小林よりは温かく、そして離さないと言うように強く握りしめてくれた。
あの瞬間、花崎のすべてが自分のものだった。
自分だけの何かを初めて手に入れた。
言葉を交わすのも、手を触れ合うのも、花崎には小林だけで小林には花崎だけだった。
終わる瞬間まですべてが。
あれほど幸せを感じたことはなかった。
望んでいた死はこれだったのだとすら思った。
一緒に死ねるなら幸せだと…そんな終わりをくれる、初めて「ありがとう」という言葉を伝えられた相手でもある。
そのまま死ねてもたぶん本当に幸せだった。
脳を痺れさせるほどの幸福感を与えたそれは、しかし死を望んでいるが故に力を残し、今でも死ぬことを許さない。
別に無理に死のうとは思わないし、無理に花崎を殺したいとも思わないのでそれは問題ない。
問題はないし、花崎が己の傍で笑って生きているのも嬉しいのだから寧ろ良いことである。
そうは思うけれど、花崎と生きたいという欲求と同時に、あのときの幸福感をもう一度欲しているのを自覚している。
あの幸福感が…花崎が、どうしようもなく欲しいと望んでいる。

話に聞く麻薬のようだと思った。

麻薬は使えば使うほど深みにはまってしまうと聞く。
もしこの欲求のままあの体温を得てしまえば、さらに貪欲に求めてしまうかもしれない。
それで触れられなければきっと苦しさは増すだろう。
今触れないのだから、その心配もないのだが。
けれど…それでもあの体温に触れたいと思った。
出来れば手だけではなく、もっと触りたい。
あの時、手を引き寄せて抱きしめてしまえばよかった。
そうだ。抱きしめて全身で体温を感じたい。
何も零さないように全部腕の中に納めたい。
思った瞬間、鳥肌が立つような感覚が一瞬にして全身を這い上がる。
腰の辺りがずしりと重くなる。
「あ?」
小林は自身の謎の感覚に訝しむが、靄が反応していないのだから大した問題ではないのだろうと判断する。
花崎に、躊躇いがちに手を伸ばす。
無理なことは分かっているけれど。
せめて少しでも近づきたい。
傷つけないぎりぎりまで。
そう思って伸ばした指先は、何故か花崎の頬に触れた。
触れたら、少しひんやりしていた。
けれど温かかった。
そうだ、この温度だ。
何故触れたのかなど考える余地もなく、とにかく手を伸ばす。
両手で触れられた。
「本当に触ってるのか……?」
漸く本当に触れていると認識するしつつも、夢かなにかではないかと疑いも持ってしまう。
でも、夢でもいいから、もう無いかもしれないこのチャンスを逃したくないと思う。
花崎の全部に自分の全部で触れたいという願い。
それが、今ならできるかもしれない。
食べたいものを目の前にしたときのように唾が溢れ、それを飲み込んで喉が鳴る。
赴くままに頬に口付け、そこで視界に入った首筋にも唇で触れ、軽く歯を立て、強く吸い付く。
それが何故か楽しくて、首筋をたどる様に繰り返していく。
花崎は不快だったのか、身動ぎして虫でも払うように手を動かす。
その手すら、靄が弾くことはない。
ついでとばかりに寝返りを打って背を向けられた。
それでは見えないと小林は花崎の体を引っ張って仰向けにし、上に乗り上げる。
首筋が嫌ならばと、今度はタンクトップから覗く鎖骨に口付けながら、前ファスナーを開け、空いている手で花崎の体を弄り始めた。




「こばやし……?」
流石にそこまでされれば当然花崎が目を覚ます。
頭上から声が聞こえて、小林は上体を起こした。
「起きたか」
「なにしてんの?」
「お前に触ってる」
体の距離は僅かに開けたものの、手はまだ花崎の体に置かれたままだ。
「あ…そういえばそうだな! なんで?」
突然触れるようになったのは何故なのかと問えば、小林は少し考える素振りを見せる。
「知らねえ」
しかし、答えはそこにたどり着き、答えたのだからとばかりに花崎の体弄りを再開する。
「触れるようになって確認したいのは分かるんだけど、正直、止めてくれるとありがたいんだけど…」
触れるのは喜ばしいことだが、服が脱がされ素肌に触れられると言うのは極力ご遠慮願いたい。
「駄目だ」
「ええと…じゃあせめて服を脱がすのはやめてくんね?」
「いやだ」
余程触れるという事実から離れたくないのだろうと花崎は判断して、けれど服を脱がす必要性はやはり見い出せずに告げれば、しかしそれすら拒否される。
「嫌だったって、俺の服なんか脱がせてどうすんの?」
「どうする……」
何も考えていなかったが、改めて思考を巡らせた小林の脳裏に、嬉しそうに微笑みあう男女の映像が思い出される。
『ひとつになれたね』
『これできみはオレのものだ』
『貴方も私のものなんだからね』
『そうだな』
そんな会話をする二人。
あれだなと小林は思った。
「セックスする」
なので、素直にそう告げる。
ひとつになれる行為なのだ。
相手を自分のものにし、相手のものにもなれる行為なのだ。
ならばあれしかないだろうとまで思い始めた。
「は、はああ!?」
傍から見れば突拍子もない小林の言葉に、困惑交じりの悲鳴を上げる。
「まてまてまて! 何言っちゃってんの!? 意味わかってんの!?」
「当たり前だろ」
「マジで!?」
小林がその手の知識を有している事実は、花崎にさらなる混乱を招く。
「で、でも男同士じゃできないから!!」
とはいえ、驚いている場合ではないとなんとか思い留まらせようとする。
「大丈夫だ。尻の穴を使えばできる」
「なんでそんなことまで知ってんだよ!?」
「この前あいつにもらった資料の中にあった」
「資料?」
「自分でするための資料だ」
その言葉に花崎は先日のことを思い出した。
後を押し付けられた大友が渡したということだろう。
「大友ー! なんてもん渡してんだー!!」
自分が押し付けたことを棚に上げ、この場にいない大友に文句の叫びをあげた。
そして改めて小林の肩を掴んで言い聞かせるように向き合う。
片手は開かれた前を掻き寄せるように掴んで守る。
「落ち着け小林! あれは女と男でやるもんだから!!」
「でも穴があるならできるんだろ?」
「極論すぎんだろ!! 大体俺相手じゃいくら触ったって反応しないって!!」
会話の間にも剥かれそうになる服を引っ張って抵抗しながら花崎が言えば、小林は何言ってんだこいつ、とでも言うような顔をして手を止めた。
「してる」
「へ?」
「ほら」
止めた手で、抵抗の必要が無くなって同じように力の抜けた手を掴んで自分の中心を触らせた。
「うわっ、何触らせて…」
文句を言おうとして、しかし手の内にある硬い感触に呆然とする。
「うそ……」
何か仕込んでいない限り、確かに反応しているそれの感触だ。
「そういえばさっき、花崎に触りたいって思ったときにここら辺おかしな感じになったけど、これがムラムラってやつか」
「何冷静に考えてんの!? てか俺に触りたいって何!? ムラムラ!? なんでそうなった!?」
「うるせえ」
混乱する花崎の叫びに面倒くさくなり、小林は花崎の中心を服の上から掴んだ。
「ぎゃあっ!」
「お前も反応すれば問題ないんだろ?」
言いながら、服の上から強く摩る。
「な、なんか違う…ぞ! 小林っ!!」
叫ぶが、急所を握られて花崎は抵抗らしい抵抗が出来ない。
服の上からの刺激は乱暴で痛みすら感じるが、他人にそこを弄られているという事実も刺激として重なって反応し始めている。
余計に痛い。
花崎は一度、小林のそこに視線を送る。
ゆったりとしている服のはずなのに、反応しているのが見ただけでも分かる。
そこまで反応してしまっていると言うなら、今更留まるのは難しいだろう。
せめて一度抜く必要がある。
そういえば小林は自慰の仕方を聞きに来て、そこで貰った資料からセックスにたどり着いたのだという。
資料では結局自慰の仕方が分からず、だから花崎とセックスするなんて言葉に行き着いたのかもしれない。
ならば、きちんと教えて一度出してしまえばいいのだと花崎は思い至った。
「分かった! 付き合うからちょっと落ち着け!!」
付き合う、と言う言葉に反応して小林は手を止めた。
「一度ちょっと離れて」
「本当に付き合うんだろうな?」
「だーいじょうぶだって。服が汚れるから脱ぐんだよ」
「僕が脱がせたら嫌がったのに自分では脱ぐのか?」
少し不服そうな小林に、花崎は苦笑する。
「汚れるよりマシだからな。オレのことばっかり剥こうとしないでお前も脱げ」
汚れたら困るだろ。と言えば、小林も素直に脱ぎ始めた。
どちらも一糸纏わぬ姿になって、ベッドの上で改めて向かい合う。
一糸纏わぬというには、花崎はシーツに包まれているが。
「これからオナニーの仕方を教えてやる!」
「はあ?」
何ていきなりそんな話になるのかという視線を送る小林の前で、しかし花崎は先を進めていく。
「まずティッシュ! これが近くに無いと困るからな」
とんっ、とベッドの上にしては大きな音を立てて二人の間に箱を置く。
「なかったら?」
「タオルかハンカチかな。とにかく拭取れるもんがあれば、まあよし! でも捨てられるからティッシュが便利!」
ちなみに風呂で済ませるのが一番楽。そのまま洗えるから。
次点はトイレ。トイレットペーパーで拭けるし手も洗えるから証拠が残りにくい。
と、無駄な知識まで披露して先を進める。
「で、本番。今回は既に反応しているのでネタは無しでいいな」
「ネタ?」
「お前が大友に貰ったムラムラするっていう画像とか動画」
「アレは結局ムラムラしなかったぞ。さっきおま…「とりあえず今回は無しとして!!」
これ以上小林に続きを喋らせてはいけないと思い、花崎は少し大きめな声で被せる。
「反応したそれをかるく手で握って、少しずつ指で刺激を与えていく」
実践しようとした花崎がソレに手を置くと、小林がガン見しているのに気付き手を止めた。
「あんまりじっと見られると恥ずかしいんだけど……」
「見なきゃわかんないだろ?」
「そうだけど! 自分でやってるの見られるの恥ずかしいんだよ!!」
「これがか?」
何が恥ずかしいのか分からず、小林は手を伸ばす。
「うわっ! 触んなよ!」
「何でだ?」
「何でって、俺のに触ってどうすんだよ!」
「触んないとわかんねーだろ」
「自分の触れよ!」
花崎は怒るが、小林は聞く耳持たずで軽く花崎のそれを撫でていく。
「これ、食われると気持ちいいらしいぞ」
いくらその手の知識が少ない花崎だってフェラの存在は知っている。
「食うって言うか、咥えるな。噛んだら痛いから食っちゃダメ」
ふーん、と言いながら、小林の視線が花崎のそれに集中する。
恥ずかしさとは違う悪寒が走った。
「口でしたら絶交だからな」
フェラの存在は知っていても排尿器でもあるそれを口にするなんてとんでもないと思っている。
健康の為尿飲する人間もいるのは知っている。
水を失った遭難者が生命維持の為に尿を呑むこともあるし、傷口を不衛生な水で洗うより安全らしいということも知ってはいるが、少なくとも今はそんな切羽詰った状況ではない。
だというのに、なんとなく今の小林だとやってしまいそうな気がして花崎は釘を指した。
「駄目なのか?」
「絶対駄目」
両腕でバツを作り、きっぱりと拒否する。
「それに、とりあえず自分で出来なきゃなんだから、まず手でやらないと駄目だろ」
苦笑しながら言えば、小林は素直に頷いた。
「わかった。手でやればいいんだな」
「だから俺のじゃなくて自分のやれって!」
「ならお前が僕のをやればいいだろ」
「お前ねー……」
そういう問題じゃないだろ、と花崎は呆れるが、ソレがまったく見当はずれな意見ではないことも理解している。
何処をどれ位の強さでというのを感覚で探すより、知っている花崎が実際に触ってやった方が遥かに早いからだ。
ついでに、自分がやっているのを凝視されることもなくなるだろう。
「やらないのか?」
「うっ…」
それに、自分以外のモノに触れる機会などそうない。
正直なところ、花崎だってまったく興味がないわけではないのだ。
ただ躊躇いの方が大きいだけだ。
とはいえ、自分だけが小林に良いようにされているというのも面白くない。
「わーったよ」
花崎の手が小林のソレに添えられた。
他人のものに触れるのに抵抗があるのか動きはたどたどしいが、花崎に触られているという事実だけで小林の身体は熱を帯びていく。
自分が触ることで反応していくソレが面白くて、花崎は少しずつ躊躇いをなくしていく。
筋をたどり、亀頭を指先で少し強めに押す。
なるほどそうすればいいのかと、されている小林もそれに習って指と手のひらを使い花崎を追い上げていく。
「こ、ばやし……もうっ!」
イク、とは音にならない口の動きだけをして、花崎は小林の手に熱を放った。
花崎に名前を呼ばれた瞬間膨れ上がった欲望は、達する瞬間少し力が籠もってしまった花崎の手に強めに刺激され小林も達した。
二人ほぼ同時に達して、室内には荒い呼吸だけが響く。
少しして、花崎が力を抜くように息を吐いた。
「少しは落ち着いた?」
ティッシュに手を伸ばしながら花崎が尋ねる。
「ああ」
小林は花崎の出したものを拭取るのが躊躇われて、白濁としたそれが絡みつく手を見つめて頷いた。
「んなもん見てても仕方ねーんだから拭けって」
だが、残念なことに、自分の手を拭き終えた花崎によって清められてしまった。
「お前は?」
「ん。俺も平気」
終わってしまえば恥ずかしさもなく、すっきりとした気分だけが残っている。
よーし、綺麗になった。と小林の手を離した花崎は手に持ったティッシュを握り、このままゴミ箱でいいのだろうかと悩む。
バレないようになにか袋に入れた方がいいかも知れない。
何かないだろうかと、小林の部屋を見回すが、適当なものが見つからない。
包み紙に使えそうなものを見つけて視線を送れば、昨晩眠気を押して書き上げた書類だった。
そういえば報告書を提出していなかったと花崎も気づき、井上に怒られるなとげんなりした気分になる。
オナニーの授業料として小林に提出させようと心に決めた。
そういえば小林は一度井上に自慰について聞いたはずである。
ならば普通にゴミ箱に捨ててうっかり井上に見つかっても其れ程気にはされないだろう。
小林の部屋である以上花崎に嫌疑がかかることもなければ、おそらく小林は知られても気にしない。
ならばやはりゴミ箱という選択肢が正しいのかも知れない。
「おい、平気なら続きするぞ」
などと考えていたら、痺れを切らした小林にベッドに引き戻された。

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