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07 May

恋は自由にならない

大友→花崎
大友は好きになった子は、外堀を埋めて手に入れるか、大事過ぎて手が出せないかのどちらかになりそうだと思っています。







女の子は普通に可愛い。
顔も頭も良いから、それなりにモテるので可愛い女の子に不自由したことはない。
モテる割には基本的に女の子との交流はそれほどないが。
女の子の相手をしているより、研究開発や実験をしているときが一番楽しい。
同じ誰かを傍に置いておいて一番不快じゃないのは山根だろう。
まだ小学生の頃だったが、良い助手を見つけたと自負している。

恋なんてするもんじゃない。
するならせめて相手を選びたい。
なのに、自分の意志ではどうにもならないから、やっぱりするもんじゃないと思う。
しかし落とし穴に落ちたように、落ちることすら自分の意志ではどうにもならない。
落とし穴には気づける気がしていたのに、うっかり嵌るとは自分はまだまだだと思ってしまう。
一緒にいて居心地がいい相手が恋の相手とも限らない。
一番恋をしてはいけないと分かっている相手にそれを抱いた、と気づいたときには軽く絶望した。
アイツを好きになる子は苦労して泣かされるのがオチだと思っていたのに。
性格がクズだから泣かされるのではない。
本当に振り向かせることが出来ないから泣くのだ。
無意識に人を誑す癖に、自身は決して落とされない。
それでも一緒にいるのが嬉しくて、笑顔を見れれば幸せで。
自分が届かないことに苛立って。
それでも離れるのは苦しくなる。
愛してもらえなくても良いから傍にいさせて欲しい、だなんて不毛なことを考えてしまう。
そんな相手に恋をするなんて、なんと愚かなことだろうか。
愚かだと分かっていても好きになってしまった以上、思考からは切り離せない。
そして考えてしまう。
アイツの心の内側に入れるのはどんな子なのか。
きっと、アイツが根負けするくらいに真っ直ぐに愛をぶつけてくる相手だろう。
それとも、アイツの方から思わず好きになってしまうくらい凄い子かも知れない。
どちらにせよ自分のような天邪鬼ではない事だけは確かだろう。
まあ、それでもいい。
自分では障害は取り除いてやれても、幸せにしてやれる気は全然しないから。
良い相手が見つかったなら応援しても良い。
幸せになる手伝いくらいはしてやりたい。
そう思えるくらいには、自分の恋心をどうこうしたいと思う以上に大切だ。
とはいえ、恋愛感情が消える訳でもない。
正直に言えば、自覚してしまったせいで下心も生まれた。
不用意に抱き着いてくるから、時々抱きしめ返してキスの一つもしてやろうかと思ったりもする。
無理矢理にでも押し倒して泣かせてみたいとかそんなことも考えたりするし、力では敵わなくとも意識を失わせるのも拘束するのも簡単だから出来なくはない。
それをしたとしても、きっとアイツは俺を憎んだりはしないだろう。
何故そんなことをするのか、理解できないかもしれない。
そして仲間たちの手前、無理して笑いながらまるで何事もなかったように振舞うかも知れない。
俺は少年探偵団に欠かせない存在だと思っているだろうから。
俺が糾弾されて追い出されたりしないように、誰にも言わず耐えるだろう。
でも軽蔑は、するかもしれない。
そして何より、本当の笑顔なんて見せることはなくなるのは確かだ。
泣き顔は嫌いじゃない。
だけど笑ってる方が似合うと思うし、今の関係も手放せないのだから、無理矢理手に入れるなど不可能だ。
「あ~、ヤダヤダ。こーんな感情、俺には似合わないってのにねぇ~」
アイツが人が自分に向ける好意を信じられないのと同じように、俺もきっとそういう意味では臆病なんだろう。

花崎に、ごり押しできそうな存在が出来た。
脇目も振らず、まっすぐに花崎の存在だけを追いかける。
花崎の本人すら自覚していない鉄壁のガードを壊せるとしたら、こいつなんだろうと思った。
嬉しいのと面白くないの半々だ。
花崎が嬉しそうに報告してくるから猶更だ。
花崎の会話の中心がそいつなのも面白くない。
少しくらいは、新しい道具開発をしたいのに既に開発済みの秘密道具の予備もちゃんと作っている俺の労もねぎらって欲しい。
「ねえ花崎、ちょっと俺のこと褒めてくんない?」
「はあ?」
「ほらー、俺頑張ってるじゃなーい? しかも助手の山根はなんかやたら少年探偵団に取られちゃってるしぃ」
そう言って抱き着いてみれば、苦笑するような気配とともに俺の背中に腕が回される。
「よしよし」
更にそう言いながらもう片方の手で頭を撫でてきた。
親が子供にするような感じだ。
それでも確かに癒されてしまう。
なんて、素直に言えるはずもない。
「うーん、男に抱きしめられるよりはやっぱり女の子抱きしめる方がいいねえ」
「お前がやれって言ったくせに」
呆れる様に肩を竦めながら、腕はあっさり離れてしまった。
けれど体ごと離れたりはしない。
「でも本当に大丈夫か? なんか疲れてるみてーな気がすっけど…」
前髪をよけて窺ってくる花崎に苦笑して俺は腕を広げる。
「じゃあ花崎の事抱きしめていい? 最近山根がいないから腕の置き場に困っててなんか手が寂しいんだよねー。この際小さくなくても女の子じゃなくても良いから抱きしめたい」
「別にいいけど」
花崎は、基本的にスキンシップ過多だ。
勿論誰彼構わずではなく、気心の知れた相手にだけだが。
了承を得たのでありがたく抱きしめることにする。
「柔らかくも小さくもないけど、なんか落ち着くわー」
「山根にもうちょっとこっちに顔出すように言うか?」
珍しく気弱な俺の様子に心配を含んだ声で訪ねてくる。
「あー…ま、大丈夫でしょ。山根1号2号3号いるし」
明智がいない今、根を詰めてしまうであろう井上が学生生活を謳歌できているのは、〝任せても良い〟と思える山根がいるからだろう。
サポートの資質に関しては俺が育て上げたのだ。間違いない。
「いい加減、新入部員の名前も覚えてやれよ」
「助手として最高の名前で呼んでるつもりなんだけどねえ」
「大友は本当に山根大好きなのな」
「そりゃ、一応俺の大事な助手だしね」
山根は大好きだ。
一番のお気に入りだ。
それは間違いない。
「ほんと、山根ならまだよかったんだけど……」
井上も勝田も野呂も好きだ。
小林も、大分好きの中に入ってきている。
でも、そのどれもが花崎に向かう好きと違う。
背中に回された腕が、慰めるように背中を一定のリズムで軽く叩いてくる。
こういうことを無意識にしてくるから、やめて欲しい。
その所為で中々諦められないのだ。
「花崎の事も好きだよー」
何となく流れに乗って適当な告白をしてしまう。
さらにうっかりキスまでしてしまった。
花崎は驚いて固まっているのか抵抗もない。
ちょっと悪戯心が湧いてしまったので、そのままキスを重ねて舌を花崎の口内に滑り込ませた。
「んー! んー! んー!!!」
漸く状況を認識したらしい花崎が抵抗してくるけど、この状況で離すと元気が良すぎて面倒臭そうなので酸欠に追い込むべく更にキスを深くする。
抵抗が止んだ頃、漸く俺は花崎を解放した。
俺を突き飛ばして二歩ほどふらつくように後退して、机に手をつくことで体を支えると、手の甲で口を拭いながら睨むような視線を向けてきた。
「なにすんだよ!」
何って、そりゃキスだけど、そう言う事が聞きたいわけじゃないだろう。
「いや、普段男なんて抱きしめることないからさあ……気を抜いてつい腕の中の子にしちゃった?」
俺の言い訳に、花崎から怒りは消えたが、代わりに呆れた視線を向けてくる。
「お前、女の子相手にいつもこんなことしてんの?」
「いや、流石にいつもって程はしないけどー、やっぱり疲れてたのかねえ?」
まあ、したことがないという訳ではないけど、自分からは正直全くと言って良い程ない。
「疲れてたらすんのかよ!?」
「えー、だぁってー、癒されたいと思うときあるでしょー?」
「こんなんで癒されんの?」
「なぁーに? 知らないのー? キスとハグは科学的に見てもストレス軽減効果があーるの」
「マジで!?」
予想外の回答だったのか、花崎が目を丸くする。
「マージなのよ。何ならもう一回してみる?」
「ヤダ。てかキスって好きな相手とするもんだろ?」
思わず冗談交じりに言ってみたら流石に拒否された。
「俺花崎の事ちゃんと好きよー?」
好きな相手にするものだとしたら間違えてはいない。
花崎的には違うのだろうけど。
「そういう意味じゃねーよ!」
幸なのか不幸なのか、花崎は誤解した。
まあこれ以上追い詰めるつもりはない。
「まあ、冗談だけどね。さっきのは男同士だしノーカンでしょ」
「そーかもしれねーけど! 気をつけろよな!!」
「はいはい、ごめんねー」
頭を撫でれば、子ども扱いが気に入らなかったのか腕を振り払われた。
「全然反省してねーだろ!」
「女の子相手ならまだしも、花崎相手に反省する必要はあんまり感じないし」
だってキスしたいくらいに好きな相手だし。
花崎は絶望も嫌悪もしてないし。
何よりも冗談で済ませるなら、反省してはいけない。
「なんだよそれ」
不満そうな花崎に、ご機嫌取りのアイテムを取り出す。
「ほらほら、お詫びに次に作成予定の秘密道具の図面見せてあげるから」
「え、まじ!? また新しいの何か作んの!?」
コロリと態度を転がした花崎に、俺は心配になった。
けど、まあ、花崎は意外と人を見る目があるからたぶん大丈夫だろう。
見知らぬ相手に気安く触れられるのを許したりはしないだろうし。
でも一応、痴漢対策もできる防犯グッズの開発を念頭に入れた。

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