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19 May

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26 August

夏の思い出・後編

後編





夕食時、各々入浴を済ませて集まったが、山根を見て花崎は目を丸くした。
「山根! 顔だけ黒いぞ!!?」
「ええ!?」
花崎の言葉に驚きの声をあげる山根に、大友はニヤリとした笑みを浮かべる。
「体には日焼け止め塗ってたけど、顔には塗ってなかったもんねー」
「大友、あんとき気付いてただろ」
あのニヤついた笑みはこういうことかと花崎は理解する。
「さーてねー」
「気づいてたなら言って下さいよー!」
膨れて山根は不満の顔を向けるが、大友はどこ吹く風だ。
「なーに言ってんの。モテる男になる為にはそのくらい自分で気づくもんだよ山根」
「どうせモテませんから!」
「そんなこと言ってるからいつまでたっても山根なのよー?」
「どうせ山根ですよ! 苗字なんですからいつまでたっても山根なのは当たり前です!」
「まあまあ。顔だけ黒いから変なんだよ。明日は体も焼いちゃえばいいんじゃね?」
「そうします」
山根はそう答えて肩を落とした。
「あ! そうだ!!」
肉を切る手を止めて、花崎は思い出したように声を上げる。
「今日はさ、この後花火やろうぜ」
「そういうのは明日の夜だと思ってたけど?」
井上の疲労も計算に入れて2泊3日で泊まりに来ている。
花火は最終日の夜だと思っていた大友は首を傾げる。
「明日は打ち上げ花火! プチ花火大会にしたかったからプライベート花火の業者に頼んだ。井上も20万までのプランならいいって言ったし」
「井上よく許したね?」
花崎の言葉に、花崎家ではなく明智探偵事務所の資金で打ち上げると知って、珍しいこともあるもんだと大友は井上の方を向く。
「今回宿泊費等は一切かかっていないからな。場所を提供した花崎の希望を少しは聞いてやってもいいだろう。小林もよく働いてくれているしな」
口には出さないが、小林が人の多く集まる花火大会への参加が不可能なので、何とか似たようなことを経験させたいという花崎の希望は読み取れた。
先に述べた通り、小林はよく働いてくれているし、どう考えても碌な人生を送ってこなかったであろう小林に、楽しい思い出を一つでも増やしてやりたいとは所長代理兼仲間として井上だって思うのだ。
「なーるほどねー」
元々井上は仲間思いではあったが、とても堅かった。
それがこうして、思い出などという不確かだが集団としてやっていく上で大事なもの為に行動できるようになったのだから、精神的にも所長としてもかなり成長しているようだと、大友は安心する。
「でもこの時期によくすぐに手配で来たねぇ」
「そういうプライベート花火を打ち上げてる会社なら赤石さんがよく知ってるところがあるって教えてくれた」
「なるほど」
おそらくそれこそ花崎グループの取引先の一つではあろうが、信頼が置けるという意味ではありがたい情報だ。
「新しい花火を色々試させてくれるならってことで、おまけ玉いくつかつけてくれるって。プロポーズとかに利用する人がいるからハートとかそういうのが増えるかもしれないらしいけど」
「いいんじゃないのー。知ってるよー? どこかのバカップルが毎日事務所でイチャつき惚気三昧だって」
大友の言葉に花崎が首を傾げる。
「どこかのバカップル?」
「いや、どう聞いてもお前らのことでしょ」
「俺ら別にいちゃついても惚気けてもいねーぞ?」
なあ、と花崎は小林を振り返る。
話をまともに聞いていなかった小林は突然話を振られて目を瞬かせる。
「何の話だ?」
「ちゃんと会話に参加しろよー。小林と俺がいちゃついてるかどうかって話!」
言われて、小林は首を捻る。
いちゃつく、というのがどういうことかイマイチ理解はできないが、普段の井上と野呂の発言と浮気調査の経験から何となく言いたいことは分かる。
が、自分達については、触れもしないのだから今も昔も行動は変わっていない筈だと小林は思い至る。
「別に何もしてねーだろ?」
「だーよなー」
ほら見ろ、と勝ち誇った笑みを浮かべる花崎に大友は肩を竦めた。
「バカップルは大体そう言うんだよねー」
そして賢明にも、花崎に聞こえないようにそう呟いた。

花崎の提案によって、夜、皆で浜に出る。
「ほら、小林。その先の紙をちぎって、筒の先端をろうそくの火で燃やしてみ?」
「こうか?」
言われるままに紙をちぎり火をつければ、突然火の粉が吹き出した。
「おおっ!?」
初めての手持ち花火に、最初小林は驚く。
「奇麗で面白いだろ」
「悪くない」
打ち上げられた花火は見たことがあるが、手元で吹き出す火の粉は空のそれとは違った綺麗さと楽しさがある。
思わず見入っていると、背後から声がかかる。
「小林、蝋燭から離れろ。他の人間が火をつけられない」
井上の注意に、小林は仕方なしに少し離れた場所まで歩く。
バケツがあるからと、指定されていた場所だ。
だが歩く間に火が消えてしまった。
数本渡されているが、火をつけに戻るにも、まだ蝋燭の周囲には皆いる。
あそこに近づくわけにはいかない。
確かに手元で吹き出す花火は少し楽しいと思ったが、面倒臭いという感情が湧いてくる。
そんな小林に火を噴く花火を持った花崎が駆け寄ってきた。
「小林! 花火! 新しい花火出せって」
花崎の慌てた様子に驚きつつも、焦って持たされた花火から一本、手に持ち変える。
「花火の火、つけるとこ俺の花火の火に寄せて!!」
花火の先は、30センチの圏外だ。
若干躊躇いつつも、小林は寄せられた花火へ自分の花火の火を寄せた。
少しして小林の持つ花火が勢いよく火を噴き始める。
「おお!」
「こうやればロウソクなくても火つけられるんだぞ」
勢いがさらに増したあたりで、今度は花崎の花火の火が消えた。
「小林、火頂戴!」
今度は花崎が火の付いていない花火を小林の花火へ寄せる。
すぐに火は移って、花崎の花火も音を立て始める。
「サンキュー」
笑って花崎は少し花火を離した。
少しして、また小林の花火の火が消える。
「あ、ほら小林。早く新しいの出せって! 俺の火が消えちゃう!!」
急かされて、小林は再び慌てて新しい花火を手に取ると花崎の花火に寄せる。
またすぐに火は移り、小林の花火が輝きだす。
「こうやってリレーしていけば終わるまでずっと一緒に出来るだろ?」
「そうだな」
「へへっ」
小林が表情を緩めれば、花崎も嬉しそうに笑った。





翌日は調整の終わった大友のウォーターガンで花崎が小林を攻撃したが、前日の勢いを知っていた為か花崎からの攻撃でも見事に弾いていた。
勢いがある以外は普通のウォーターガンなので、花崎は早々に飽きて小林を連れてダイビングに向かった。
山根は昨日とは逆に、顔にだけ日焼け度目を塗り、やはり大友の発明に付き合いながら過ごす。
早々に体力の底をついて浜辺に寝転んだ山根に、大友は砂で落書きをした。
これは後で山根が悲鳴を上げることになった。
井上は水上バイクの練習をしたあとは、パラソルの下で読書をした。
ダイビングに行った花崎たちは、しかし小林を魚が避けるのと、下手に近づけば魚が危ないと気づいて早々に引き上げてきて砂遊びをしていた。
そんな二日目を終えて、夜。
「おい、花崎」
怒りをにじませて井上が花崎を呼んだ。
「なんだよ井上」
だが、苛立つ井上に花崎は気にする素振りはない。
苛立っている理由が分かっているからだ。
「バーベキューはいい。だが何故すべて串焼きなんだ」
指し示されるのは、用意されたバーベキューセット。
食べやすいように、食材が綺麗に鉄串に刺されている。
「食べやすいし取りやすいし焼きやすくていいじゃん」
「だが全ての串に野菜がついてるぞ!」
そう、井上が苛立っている理由はここだった。
「そういうもんだろ?」
確かに、串焼きは野菜と肉が交互に刺されることが多い。
だが、海鮮等の場合は野菜を入れないこともある。
けれど本当にすべての串に野菜が刺さっているのだ。
「企みか?」
井上が花崎を睨み上げる。
「企みってひでーなー。勝田に井上にちゃんと野菜食べさせてくれって言われただけだし」
花崎は動じず、肩を竦めてそう返した。
「やっぱり企みじゃないか! こんなそのままのピーマンやニンジンが食えるか!!」
「美味いよ? それに丸のままって言うけど、井上どんなに細かくしても気づくじゃん」
花崎の言葉に、井上は無言になる。
アレルギーでもあるまいし、そろそろ普通に食べられるようになっていいと思うのだが。
井上も、食べられない事を良いと思っているわけではない。
だが、食べられる気は全くしない。
暫くの沈黙の後、先に折れたのは花崎だ。
「仕方ねーなー。火を通した玉ねぎは食えんだろ? カレーとかに溶かし込まれてるやつとかチキンライスの中のやつとかは食えてるし」
「そのままはちょっと…」
細切れではなく、完全に溶けた玉ねぎは井上も食べることはできる。
しかし、ハンバーガーなどでスライスされた生の玉ねぎは食べられない。
「タレ付けりゃ食えんだろ! ピーマンとかは食ってやっから」
花崎の出す妥協案に、井上は渋々従うことにした。
それでも串から外されて器に盛られた肉と玉ねぎを前に葛藤している。
井上が一口も食べない間に、小林がせっせと串を消費していく。
食べている間、小林は基本無言だ。
その様子を伺いつつも、花崎は井上の手元が気になる。
食べるといった以上、取り敢えず肉だけ食べようとしない辺り、井上はどこまでも真面目だ。
このままではどちらも冷めてしまうと、花崎は諦めて井上の皿から玉ねぎも抜いた。
「悪い……」
井上は申し訳なさそうに肩を落とす。
「えー。井上に甘すぎじゃなーいー?」
それを見て大友が声をかける。
「まあ、残したら作ってくれた人に悪いし、井上無理に食べさせようとすると食事抜いた方がマシとか言い出すからさ」
一応、事務所の慰安旅行だ。
食事時くらい井上の心を休ませてやってもいいだろう。
あの勝田すら、井上に野菜を食べさせるのは一筋縄ではいかないのだ。
考えれば花崎にこの場でどうにか出来るはずもない。
「そろそろ花火の時間だな!」
と、花崎が言ったかと思えば、まさに一発目が上がった。
「たーまやー!」
「かーぎやー!」
上がるたびに、花崎が声を上げる。
「なんだそれ?」
訳の分からない言葉で声を上げる花崎に、小林はバーベキューの串片手に首を傾げた。
「さあ? なんか花火の時はこういう掛け声するって聞いたことある気がするから言ってみてるだけ」
「どちらも花火師の屋号だ。前者は一度焼失して現在縁者によって再興しており、後者はそれより古くから現在まで続いている花火の老舗だ。掛け声もそこからきている」
花崎の答えに、井上が説明を加える。
「へー。だってさ」
知識面においては井上を頼っておけばほぼ間違いないだろうと思っている花崎は、頷いて小林を振り返る。
「ならあれ打ち上げてんのがそれなのか?」
「いんや。花火をどっから仕入れてるかは知らねえけどイベント会社は全く別」
そんな屋号は無かった筈である。
「ならなんで叫ぶんだ?」
「そういうもんだから?」
「素晴らしい花火に対する一種の代名詞のようなものだ」
「つまり綺麗だぞー! 凄いぞー!! って言ってるってことだな!!」
「ふーん」
小林には声を張り上げる意味は分からないが、花崎の行動が全く意味のないものでないということは分かった。
「叫ぶとなんか楽しいし、花火は綺麗だし、小林も一緒にやらねえ?」
「やらねえ」
即答で小林は拒否した。
意味が無い行動ではないと分かったからといって一緒になって声を張り上げる気はない。
それで花崎が大喜びするというなら少しは考えないでもないが、小林の返事に気落ちした様子もないので拒否も問題はないだろう。
というより、花崎を見れば小林の返事など気にしていないどころか、別のことを考えているようであった。
あ、と何かに気付いたように花崎は声を上げる。
「そうだ! 花火バックに集合写真撮ろうと思ってたんだ! 野呂、っていうかピッポちゃんの代わりはこのヌイグルミな」
やべー、忘れるところだった、と袋から縫い包みを取り出す花崎の声に、小林もハッとする。
「写真、撮ってねえ…」
多く写真を撮る機会があったはずなのに、普段その行動をしない小林は、花崎がしなかったこともあり、すっかり失念していた。
「ああ、大丈夫。今回は小林と一緒に思いっきり遊びたいからって花崎に俺が頼まれてるからちゃんと撮ってあげてるよー。ドローンとか隠しカメラとか色々仕込んでるし」
小林の言葉に大友が答える。
「この隠しカメラいいな。尾行調査の時とかスゲー役に立ちそう」
花崎はいつものように手首に付けていた腕時計型ワイヤー射出装置を示す。
旅行前に大友に改造してもらったものだ。
「でっしょー。ここまで小型化させつつ画質を維持するの結構大変だったんだよ~。データを転送するなら小型化はさせやすいけど、電波がないところでも役に立つようにメモリをどこまで小さくできるかってのが今のところ課題だねー」
「でも作っちまえるんだからすげーよ」
「まあ俺、天才だからねー」
「さっすがー!!」
発明においては間違いなく天才だろうと花崎も認めている。
大友ならできると信じているからこそ簡単に頼むのだから。
「ていうか、花崎先輩、ピッポちゃんのヌイグルミなんて持ってきてたんですね」
同じく大友の発明がすごくても驚かない山根が、それよりも気になった縫い包みを指す。
「だってさーやっぱ集合写真はみんな揃えるもんだろ―」
「その場合、本来は野呂さんがいるべきなのでは?」
「え、じゃあ次からは野呂の人形でも用意するか。ピッポちゃんと同じくらいで。今回必要なら学校のアルバムみたいに上の方に丸く載せる」
「怒られますよ」
人形は物に寄るだろうが、とりあえず、欠席した生徒扱いを野呂は嫌がるだろうと山根は思う。
「っていうか、花火の玉数もうそんなにないんだから早く並べって!!」
「ほらほら~次の花火でシャッター切るよー」
大友の言葉に、花崎と山根は慌てて井上の隣に並んだ。
ピッポちゃんのぬいぐるみは井上が抱いた。
男だらけの集合写真の背後に大きなハートの花火が咲いた。







「小林ー! アルバム出来たぞー!!」
数日後、花崎は挨拶もそこそこに小林に向かって手に持った本型のそれを見せた。
二人でソファに座り、中身を確認していく。
「今度はお前もいるな」
「今回は小林のアルバムじゃなくて俺と小林のアルバムだからな!!」
二人の、と聞いて小林も表情を緩める。
「大友が頼み聞いてくれてよかったー。小林この前、俺が写ってないって言ってたから今回は一緒に写ろうと思ってさー」
言いながら、また一枚めくる。
途端に花崎は目を輝かせ、小林はげんなりとした。
「ほらこれ! 小林がスイカ粉砕した時のやつ! やっぱ小林の力っておもしれーよなー」
「消せ!」
小林から見れば転んだ時の写真だ。
嬉しくもなんともないどころか、不快な思い出の一つだ。
「もう印刷しちゃってるから消えねーって。いーじゃん、ぜーったい後で思い出しても楽しいって」
「お前がな」
「そう! 俺が!!」
胸を張られて、小林は呆れた視線を向けつつも舌打ちを一つして、それ以上は何も言わない。
花崎が楽しいというなら、小林は我慢しても良いと思ってしまうのだ。
「あとこっちは少年探偵団のアルバムな。小林と俺だけじゃなくて他のメンバーの写真もいっぱいあるやつ」
「あいつ、ほとんど寝てるぞ」
井上の写真をみた小林がそんな感想を溢した。
確かに室内でも砂浜でも大体井上は座って本を読むか横になっていた。
「あー。井上先生はお疲れだったから」
「誰の所為だ。あと先生と呼ぶなと言っているだろう」
「日頃から根を詰めすぎなんだって」
花崎の言葉に井上は苦情を投げるが、花崎は呆れたように言葉を返す。
「でもほら、水上バイクの写真もあるよ。あと花火の時のやつとかバーベキューのやつとか。これとか勝田に見せたら井上怒られんな」
「お前、そんなものまで撮っていたのか!!」
「撮ったのは大友! 俺はプリントアウトしただけ―」
井上は怒鳴るが、野菜を残している写真に対して声をあげられても怖くもなんともない。
花崎の態度か、あるいは勝田への言い訳を考えているのか、井上は頭を抱えた。
「バーベキューは美味かった」
そんな井上を気にせず、小林はバーベキューの味を思い出して表情を緩める。
「だな。またやろうぜ! 今度は山とか行ってさ!!」
「今度……」
花崎はよく未来の約束をする。
「そっ! こうやって色々予定立てんの楽しいし、ちゃんと計画しようぜ!!」
あれもやりたいこれもやりたいと言いながら、小林とこの先もいるのが当たり前のように次々と予定を打ち出す。
それが小林には嬉しい。
花崎が約束通り、小林から離れないと言っている気がするからだ。
「あー! でも山って虫とか多いから虫除けちゃんとしないとなー。いいなー小林、虫に刺されたこともねーんだろ?」
「多分ない」
少し考えて、虫に刺される、がどういうことなのか今一つ分からないが、虫が近づくことも出来ないのだからきっとないだろうと思う。
「ほんっと! 小林の力のそういうとこ羨ましい!!」
「僕はいらねえけどな」
確かに便利だ。
花崎と出会い、少年探偵団として活動するようになって、便利だと思えるようにはなってきた。
けれど、靄がある限り花崎に触れないのだから、やはり小林にとっては邪魔という認識の方が強い。
「えー! かっこいいのに勿体ねーよ。小林が要らないなら俺が欲しいくらい」
「やれてもお前にはやらねえからな」
冗談じゃない、と小林が言えば、花崎は不満そうに眉を寄せる。
「何でだよー!」
「お前にやったら結局お前には触れねーじゃねーか」
花崎に弾かれるなど、絶対に御免だと小林は思う。
「まあ、そうなんだけどさ…」
すごい力なのにと少し拗ねたような顔をして、でも確かに小林の力が消えても触れないのは嫌なので、花崎は多少の葛藤をしながらアルバムをめくる。
「お、これ! 小林、砂に埋められた時スッゲー楽しそうだと思ったけど、こうしてみてもやっぱり嬉しそうな顔してるよな」
「砂はどうでもいいけど、あの状況は悪くなかった」
珍しい小林の言葉に花崎は目を瞬かせた。
「埋まんの楽しい?」
「お前が上に乗んならな」
「潰された方がいいの?」
砂以外の重みもあった方が良いということだろうかと花崎は首を傾げる。
「今度お前もやってみろ。そうすりゃ分かんだろ」
あの感覚をどう言い表せばいいのかもわからず、言ったところで恐らく花崎には伝わらないだろうと判断した小林はそう告げた。
「そうだな。じゃあ来年はまた海にも行こうな」
小林が、花崎の未来の話を好きなように、花崎も、小林の今度、という言葉を聞くのが好きだ。
今度を考えてくれることも嬉しいし、今度があるなら約束を守る小林はきっとそこまでは絶対に生きようとしてくれるだろうからだ。
約束を守ると信じているが、小林の靄が消える気配がまだないので、花崎の不安も消えないのだ。
靄が消えたら消えたで、小林の安全を考えて不安になるであろうことも目に見えているが。
最後の花火の集合写真を見て、その後何もないはずなのに最後の一枚をめくる。
すると、綴じ具が見えた。
「このアルバムさ、継ぎ足しが出来る様になってんの。いっぱい増やしていこうな!」
「ああ」
これからも増えるであろう花崎との思い出。
過ぎてしまった過去など思い出してどうすると思っていたが、これが増えていくのは悪くないと、物に頓着も執着もしない小林は、しかし初めて〝物〟であるアルバムを大事にしようと思った。





あとがき


ということであとがきです。
夏っぽいイベントをいろいろ突っ込んでみようと思った結果出来た話です。
静岡だったのはバブル期とかに海辺なら伊豆辺りに別荘買う層が結構いたって聞いた気がしたので、お金持ちの花崎さんちもステータス的に持っていても良さそうなのとダイビングスポットがあること、東京からそこまで離れていないので選びました。
※海
・海水浴
取り敢えず夏っぽい。
・水かけっこ
プールでやってたからもっとやって欲しい。
・砂遊び
アート作品は小林に破壊されるかもしれないし、山作ってトンネル開通とかも出来ないので、とりあえず埋めることにしたけど、花崎を上に乗せたらすごく楽しかったです。
・スイカ割り
小林に西瓜を粉砕させたかったんです。
ビーチバレーはボールが小林によって破裂させられる可能性があるので断念。
ダイビングは面倒になったのでさらっと流しました(ぶっちゃける)。
山根の日焼けは、大友にいじらせたかったがためだけに被害が…
でも山根って黒く焼けるタイプじゃないかと…。
地毛が茶髪の友達が日焼けでえらい目にあっているので、花崎には対策させました。
たぶん大友も日焼け止め対策してると思います。大友の方が日焼け被害がありそう。
井上が一番髪黒いから、真っ黒に焼けるタイプな気もしますが、なぜか色黒の井上が想像つかなかったです。

2日目にかき氷の話が入るはずだったんですが、スイカ食べたりバーベキューしたり、食べてばっかりだなと思ったので分割しました。
方向もなんかシリアスに向かいがちでしたし。

※バーベキュー
これも夏っぽいかなと。
※花火
花火大会とかお祭りは小林が行けないので手持ちとプライベート花火で。
プライベート花火、意外と安価で出来るんだなあって思いました。
山根は線香花火をやるイメージ。
一番最初この話を書こうと思ったのは、やっぱり晴兄との写真ですね!
思い出=写真=アルバム!
晴兄との写真があれ以外出てきてないからあまりないのかもしれない。
実は花崎もあまり写真を取られる経験がない!?
じゃあもう二人のアルバムを作ろう!!
って感じで出来た話でした。
この先もいっぱい写真増やしていってほしいです。

こんなところまでお付き合いありがとうございました!!

 

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