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19 May

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22 August

ネオンブルー・アパタイト

ネオンブルーアパタイトを見て、花崎の目の色だなーと思いました。
本当は絵が描けたら絵本みたいに描きたかったんですけど、
何で絵ってあんなに難しいんでしょう。
たぶん面倒臭がり屋なのが一番の問題なのでしょうが……。
ちなみに終わり方が尻切れ感半端ないです。












アパタイト。
この鉱物は美しいが柔らかく傷つきやすいため、あまり宝石では見かけない。
けれど時折、宝石として扱える大きく美しいものが出る。
ディープブルーからブルーグリーンまで石の質によって色は変われど、どれをとっても青が美しいそれはとても希少なもので。
しかし不用意に扱えば壊れてしまう。



展示される為のガラスケースに入れられた宝石。
しかしもう一つきれいで大きな宝石がそこにはあった。
展示品はそちらが選ばれた。
やはり宝石としての価値など無いと諦めた宝石を、展示されるはずだった宝石は自分が乗せられていた柔らかい布で包んで消えた。
返さねばと、その布を纏ったまま道に転がり落ちた宝石は、男に拾われた。
男は宝石を布ごと置くと、その周りに無骨な針金で骨組みを作った。
その針金に粘土を重ねていき、次第に形ができてきた。
脆い宝石はすっかり覆われ、打たれ強い粘土は傷ついてもすぐに直せた。



けれど、一人の男が粘土の置かれた土台に穴を開け、宝石を包んだ布を取り去った。
守る布を失った傷つきやすい宝石は、土台ごと揺らされて今まで自分を守っていたはずの針金にもぶつかり、簡単に傷ついていった。
堪らず針金の中から飛び出せば、布を奪った男の手に落ちてしまった。
そしてその手の上で、傷ついていた宝石は簡単に砕かれてしまった。
自分の所為で宝石が砕かれたのを知って、針金が消えた。
基礎が消え、打たれ強かったはずの粘土はしかしバランスを取れず形を失い、砕けた宝石を巻き込み、ただの固まりになった。
ただの塊は見るに耐えない存在で、しかも粘土に混ざった宝石の欠片は触るものを傷つける。
打たれ強くうまく形作られた粘土の作品でもなく、綺麗で希少な宝石でもなくなった石はもう誰にも見向きされないと思った。
それでいいとも思った。
触られれば尖った破片が誰かを傷つけてしまうから。



けれど、また拾い上げられた。
その手は簡単には傷つかない硬度を持ったルビーの少年だった。
宝石が原石を見つけて磨き上げたら、自信が誰が見ても美しい宝石になったというのに、少年は宝石を気にし続けた。
少年は宝石の形など気にしなかった。
形は変わってもその粘土はその粘土であり、砕けてなおその宝石はその宝石なのだと。
宝石の価値を示していた色は変わっていない。
形は変わっても構成するものもは全てそこに残っている。
光の下に出れば分かると、引っ張り出そうとした。



けれど宝石は拒んだ。
知ってしまったのだ。
自分で見つけたと思っていた居場所すら与えられただけのものだったと。
自分には何も見つけることも掴むこともできないのだと。



それでも少年は宝石を捨てなかった。
少年は言う。
お前が先に引き込んだのだと。
少年を見つけたのだと。
だから逃げるなと。


あまりに強く求めてくれるものだから、宝石は少年の手元に行こうと心を決めた。


けれど、強いはずの少年が宝石を庇って傷を負った。
ああ、やっぱり自分は存在するだけで誰かに迷惑をかけるのだと思った。
どうしていいのか分からないと思った。
そんな折、宝石を後押しする存在が現れた。
他人、誰か。そのことばかりを考えて自分がどうしたいのかを考えろと。



誰でもなく、宝石自身が価値ばかり気にしていたことに気付いた。
怖さもあったが、自分を求めてくれた少年が向かう先にいると思えば少しだけ勇気がわいた。




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